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高血圧症
高血圧とは血圧が正常よりも高くなった状態であり、日本では推定4,300万人が罹患していると言われる非常に多い病気です。みなさんの中にも健康診断などで指摘されたことがある方もおられると思います。病気と言ってもほとんどの場合は自覚症状がなく、自分でこの病気であると自覚することは困難なことが多いです。その為、8割近い3,100 万人が管理不良といわれており、自らの高血圧を認識していない方がその約半数の1,400万人いると推計されています。
原因
ほとんどの高血圧の発症には生活習慣が密接に関わっており、塩分の取り過ぎや肥満、運動不足、ストレス、疲れ、加齢などが原因となります(本態性高血圧症)。
また、頻度は少ないですが、腎臓の血管の異常などが原因で生じる腎性高血圧やホルモンの異常によっておこる原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症などによって高血圧が生じることもあります(二次性高血圧症)。
症状、合併症
高血圧によってまれに頭痛やめまいなどの症状がみられることがありますが、ほとんどの場合は無症状です。しかし、高血圧の状態が続くことで動脈が固くなる動脈硬化が起こり、この動脈硬化が進行すると脳卒中や心筋梗塞といった死に至る重篤な病気の発症につながります。脳卒中や心筋梗塞による死亡の約50%が,120/80mmHgを超える血圧高値が原因と推定されています。
検査
血圧を測定することで診断できますが、病院のみで高い値となる白衣高血圧という状態もあるため、家庭での血圧測定も診断には重要になります。病院での血圧で、上(収縮期血圧)が140以上または下(拡張期血圧)が90以上、家庭では上が135以上または下が85以上で高血圧と診断されます。二次性高血圧症が疑われる場合には、血液検査や超音波検査などで診断を行っていきます。超音波検査やCT検査、MRI検査、血液検査、尿検査なども検討されます。
治療
多くの場合は生活習慣が原因となるため、適度な運動や塩分を控えた食事、禁煙、適正体重の維持などの生活習慣の改善が重要です。生活習慣の調整のみで血圧が改善しない場合や、脂質異常症・糖尿病をお持ちの方・喫煙歴があるなどの脳卒中や心筋梗塞を発症する危険性が高い方は薬を用いた治療が行われます。血圧を下げる降圧剤には、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬、利尿剤などのさまざまな種類があり、病状に応じて使用していきます。また、年齢や糖尿病などの合併症により血圧の下げる目標値は異なります。
脂質異常症(高コレステロール血症)
脂質異常症は血液中に含まれる中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が過剰な状態や、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が不足している状態などの体内脂肪分の異常をきたした状態をいいます。以前は高脂血症と呼ばれていました。
原因
ほとんどの場合は、食生活の乱れや運動不足、肥満、喫煙などの生活習慣の悪化が原因となります。悪玉コレステロールは飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれる)の取り過ぎで、中性脂肪は高カロリーのもの、特に甘いものやアルコールの取り過ぎなどで過剰になるといわれています。運動不足、肥満、喫煙などでは善玉コレステロールが低下するといわれています。
頻度は少ないですが、遺伝によって起こる家族性高コレステロール血症や甲状腺の病気で起こる脂質異常症もあります。
症状
脂質異常症自体は無症状ですが、脂質異常を放置することで血管の壁にコレステロールなどが蓄積され、動脈が硬くなる動脈硬化症が起こります。動脈硬化症が進行すると血液の流れが悪くなり、心臓や脳の血管が詰まって心筋梗塞や脳卒中などの命の危険が及ぶ病気になる可能性が高まります。また、脂質異常症は胆嚢に石ができる胆嚢結石症やお腹に激痛を生じる急性膵炎の原因になることもあります。
検査
血液検査で血液中の中性脂肪や悪玉コレステロール(LDLコレステロール)、善玉コレステロール(HDLコレステロール)をはかることで診断できます。中性脂肪が150mg/dl以上、LDLコレステロールが140mg/dl以上、HDLコレステロールが40mg/dl以下などで診断されます。
治療
悪玉コレステロールの値を下げることが、脂質異常症の一番の治療目標となります。治療としてまず行うのは生活習慣の改善で、食生活の改善(摂取カロリーを減らし、脂質や甘いものを控えてバランスの良い食事を取る)や禁煙、アルコールの摂取を控えて適度な運動をとる事が重要となります。生活習慣の改善だけではうまくいかない場合、薬を使用します。薬にはコレステロールの合成を抑える薬や中性脂肪の分解を促進する薬、コレステロールの吸収を抑える薬などがあります。
高尿酸血症、痛風発作
尿酸はプリン体を材料としてつくられる物質で、血液中に溶けた状態で全身を流れています。血液中の尿酸の量が増加した状態を高尿酸血症といい、この高尿酸血症が足の付け根や膝などに激痛を起こす痛風発作の原因になります。
原因
食べ過ぎや飲酒、ストレス、激しい運動などによって血液中の尿酸の量が増加することで高尿酸血症が起こります。高尿酸血症の状態が続くと、関節の中で尿酸が結晶となり炎症を起こすことで激しい痛み(痛風発作)の原因となります。
症状、合併症
高尿酸血症自体は無症状ですが、尿酸の結晶化により関節で炎症が起こると関節に激痛が生じます(痛風発作)。発作は夜間や明け方に起こることが多く、足の親指の付け根やかかと、ひざ、ひじ、手首などに腫れと激痛が生じます。特に暴飲暴食、激しい運動をした後に起こりやすいといわれています。痛風の痛みは通常、3日から10日ほど続きます。
検査
血液検査で血液中の尿酸値をはかることで診断できます。尿酸値が7.0mg/dLをこえた状態を高尿酸血症といい、痛風発作の予備軍といわれています。
治療
血液中の尿酸値を6.0mg/dL以下にすることが、高尿酸血症の治療目標となります。一番の治療は生活習慣の改善で、食べ過ぎやアルコールの摂取を控えて適度な運動をとる事が大切です。ストレスの解消も重要となってきます。痛風になったことがある方や尿酸値が8.0mg/dLを越えている方は薬による治療の適応となります。薬には、尿酸が体内でつくられるのを抑える尿酸生成抑制薬や尿酸を体の外へ出しやすくする尿酸排泄促進薬などがあります。痛風発作時には痛みを取るために、鎮痛薬を使用します。
糖尿病
糖尿病とは、体内のホルモンであるインスリンが十分に働かないため、血液中を流れるぶどう糖という糖が増えてしまう病気です。インスリンの量が十分でなかったり(インスリン分泌不全)、インスリンが十分作用しなかったり(インスリン抵抗性)することによっておこる2型糖尿病と、膵臓がインスリンをほとんど作れなくなることによっておこる1型糖尿病があります。糖尿病の95%は2型糖尿病であり、一般的に糖尿病というと2型糖尿病を指します。
原因
2型糖尿病は遺伝的に糖尿病になりやすい人が、肥満や運動不足、ストレスなどの清潔習慣の乱れをきっかけに発症します。1型糖尿病は免疫の異常により、膵臓のインスリンを作る細胞が破壊されることで発症しますが、明確な発症メカニズムはわかっていません。
症状、合併症
糖尿病患者さんの多くは無症状ですが、のどの渇きや尿量の増加、倦怠感、体重減少などが現れることもあります。しかし、血糖値が高い状態が続くとブドウ糖が血管を傷つけることで、全身の血管が傷害されます。特に、三大合併症といわれる目・腎臓・神経に傷害が起きる網膜症・腎不全・末梢神経障害は、進行すると失明・人工透析・足の切断などの生活の質を大きく下げてしまう状態になる可能性があります。また、全身の血管の傷害によって脳卒中や心筋梗塞の危険性も高くなります。
検査
血液検査では血糖値や過去1~2か月の血糖値の状態を反映するHbA1c値などを調べることで糖尿病の診断ができます。1型糖尿病が疑われる場合は、膵臓のインスリンを作る細胞を破壊するような自己免疫が起きている証拠のひとつである自己抗体検査が診断の参考になります。
糖尿病と診断された場合は、合併症の有無を調べるために網膜の検査や腎機能検査、腱反射、動脈硬化の程度を調べる検査などが行われます。
治療
糖尿病の治療の目標は、目や腎臓、神経などに対する合併症を起こさないようにすることです。その為に血糖値をコントロールしていくことが重要となります。
糖尿病の原因の多くは生活習慣の乱れであり、まずは食事療法や運動療法が行われます。食事療法では、食生活の改善により体内に取り込まれる糖の量やエネルギーのバランスなどを調整します。運動療法では、運動によって糖が消費され、筋肉量が増えることによって糖を血液中から体内に取り込みやすくし、脂肪が減ることでインスリンの作用を上げる効果があります(インスリン抵抗性の改善)。
生活改善などを行っても血糖値が十分に下がらない場合は、血糖値を下げる薬による薬物療法やインスリン注射により治療が行われます。
貧血
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が少なくなった状態のことです。具体的には、女性はヘモグロビン値 11g/dl 以下、男性は13g/dl以下だと貧血と判断されます。
原因
大きく分けると鉄分・ビタミンの不足や慢性腎臓病、白血病などの病気によって赤血球の生産が低下することによる貧血(骨髄の機能異常による貧血)と胃潰瘍や胃癌・大腸癌、月経などによって赤血球が体外へ失われることによる貧血(出血性貧血)があります。その他には赤血球が破壊されることで起きる溶結性貧血などもあります。
症状
ヘモグロビンは全身に酸素を運ぶ働きをしているため、ヘモグロビンの量が少なくなると全身が酸欠状態となり、めまいや立ちくらみ、頭痛などの症状が現れるようになります。
検査
血液検査で血液中のヘモグロビン濃度を調べることで貧血の診断が可能です。そして、血液中の鉄分やビタミンの濃度、腎臓の機能などを調べることにより原因を検索していきます。出血による貧血が疑われる際には胃カメラや大腸カメラを行ったり、白血病が疑われる際には骨髄の検査を行ったりします。
治療
まずは原因をしっかりと特定して、それぞれの原因に対する治療を行っていきます。最も多い鉄分不足による貧血(鉄欠乏性貧血)に対しては鉄分の投与による治療を行い、ビタミン不足や慢性腎臓病によるものであればビタミンやホルモン剤の投与を行います。白血病や胃潰瘍、胃・大腸癌などが疑われる場合にはそれぞれの病気に対する治療が必要です。軽度の貧血であれば外来での治療となりますが、原因にかかわらずヘモグロビン値が7以下になるような重度の貧血であれば輸血や入院が必要になる場合があります。
骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、加齢や閉経などにより骨の強度が低下することで、骨がもろくなり骨折しやすくなった状態のことで、特に背骨の骨折(椎体骨折)や太ももの骨折(大腿骨骨折)などが起こりやすくなります。そのような骨がもろくなることによる骨折(脆弱性骨折)があったり、骨密度が平均の70%以下になったりすると骨粗しょう症と診断されます。
原因
主な原因は加齢であり、女性の場合は閉経後の女性ホルモンの欠乏が大きな原因となります。その他には、甲状腺や副腎の病気や糖尿病、栄養失調やステロイド剤の使用なども骨粗しょう症の原因となります。
症状
骨折のない状態では症状がないことが多いですが、背骨の骨折などは慢性的な腰痛などの原因になります。また、骨折による慢性的な痛みは体の活動量を低下させるため、そのことがさらなる骨折の原因となるといわれています。
検査
レントゲン検査で、脆弱性の骨折や骨密度の低下をみつけることができます。血液検査で骨由来の酵素(骨型ALP)を測定したり、甲状腺ホルモンを測定したりすることもあります。
治療
脆弱性の骨折があったり、骨密度の低下があったりすれば薬による治療の適応となります。薬には骨密度を上げるビタミンD製剤や骨の破壊を抑えるビスホスホネート製剤、抗RANKL抗体製剤などがあります。ビスホスホネート製剤には月1回、抗RANKL抗体製剤には半年に一回の注射で効果がずっと続くものもあります。その他に、骨密度を上げたり骨折を予防したりする目的の運動療法やカルシウムやビタミンDなどの摂取を中心とした食事療法も重要です。