消化器内科

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胸焼け、ゲップ、飲み込みにくさ、喉のつかえ感

胸焼けやゲップのほとんどは食道裂孔ヘルニアやそれに伴う逆流性食道炎などの胃酸逆流による病気が原因ですが、飲み込みにくさや喉のつかえ感も多くは同じ胃酸逆流などが原因です。しかしながら、喉や食道の癌が原因のこともありますので、定期的な胃カメラが必要です。食道アカラシアという食道の動きが悪くなる特殊な病気である場合もあります。
胸焼け、ゲップ、飲み込みにくさ、喉のつかえ感

考えられるよくある病気

逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニア

稀であるが重大な病気

食道癌、喉の癌(咽頭癌・喉頭癌)、食道アカラシア

胃の痛み、みぞおちの痛み(心窩部痛)

胃やみぞおちの痛みはお腹の上の方の臓器(上腹部臓器)である胃、十二指腸、胆嚢、膵臓が原因であることが多いですが、いわゆる盲腸(急性虫垂炎)でも初期ではみぞおちの痛みがある場合もあります。血液検査や腹部エコー検査、胃カメラが診断に有用です。

考えられるよくある病気

胃炎、胃十二指腸潰瘍、機能性胃腸症、慢性胃炎、ピロリ菌胃炎、胆石症・胆嚢炎、膵炎、急性虫垂炎

稀であるが重大な病気

胃癌、膵癌、膵嚢胞性腫瘍

背中の痛み(背部痛)

背中の痛みは背中側に近い臓器(後腹膜臓器)である十二指腸や膵臓、腎臓が原因である場合や背骨や腰の筋肉が原因となる場合があります。転倒などのきっかけがなく急激に起こる背中の痛みは尿管結石や十二指腸潰瘍、膵炎などが原因であることが多いですが、大動脈の壁が裂ける大動脈解離という恐ろしい病気である場合もあるため強い背中の痛みが急激に起こる際に病院への受診が勧められます。長く続く痛みとしては膵臓の癌などが原因となる場合もあり、血液検査やエコー検査などが必要です。

考えられるよくある病気

十二指腸潰瘍、膵炎、尿管結石症、腎盂炎、腰痛症、腰椎圧迫骨折

稀であるが重大な病気

膵癌、膵嚢胞性腫瘍、大動脈解離、多発性骨髄腫

嘔吐、悪心(吐き気)

嘔吐とは胃の中身を口から吐いてしまうことを指し、嘔吐しそうになることを悪心(吐き気)といいます。主な原因としては、1.胃や腸などの消化器の病気によるもの、2.脳や心臓、膵臓、耳などの消化器以外の病気に伴って起こるもの、3.薬の副作用で起こるものなどがあります。
嘔吐、悪心(吐き気)

考えられるよくある病気

胃炎、胃十二指腸潰瘍、腸閉塞、急性虫垂炎、便秘症、急性膵炎、めまい症、乗り物酔い、妊娠悪阻(つわり)

稀であるが重大な病気

心筋梗塞、脳梗塞、くも膜下出血、薬物中毒

吐血(血を吐く)

吐血とは吐いたときに血が混じることで、赤い血が混じる場合(鮮血吐血)と黒っぽい血が混じる場合(黒色嘔吐)があります。赤い血の場合は食道裂傷(マロリー・ワイス症候群)、食道静脈瘤などの食道の病気、黒っぽい血の場合は胃の病気であることが多いです。食道や胃の癌などが原因である場合もあります。大量の吐血があった場合には命に関わりますので、救急車で救急病院を受診する必要があります。ほとんどの場合、胃カメラを行うことで診断がつきます。

考えられるよくある病気

食道裂傷(マロリー・ワイス症候群)、逆流性食道炎、胃炎、胃十二指腸潰瘍

稀であるが重大な病気

食道癌、胃癌、食道静脈瘤、胃リンパ腫

下腹の痛み(下腹部痛)

下腹の痛みはお腹の下の方の臓器(下腹部臓器)である虫垂や盲腸、大腸が原因であることが多いですが、女性の場合は子宮や卵巣が原因となる場合もあります。特に右下腹部の急激な痛みは、いわゆる盲腸(急性虫垂炎)で起こることが多いです。血液検査や腹部エコー検査が診断に有用ですが、大腸癌などのこともあるため、大腸カメラが必要となる場合もあります。
下腹の痛み(下腹部痛)

考えられるよくある病気

急性虫垂炎(右側)、過敏性腸症候群、大腸憩室炎、便秘症、虚血性大腸炎(左側)

稀であるが重大な病気

大腸癌、潰瘍性大腸炎、腸閉塞、S状結腸軸捻転症、卵巣腫瘍

下痢

下痢は便が水っぽくなったりやわらかくなったりすることで、急に起こる下痢の場合は食事が原因であることがほとんどです(食べ過ぎや細菌・ウイルス感染)。その場合は数日で自然に良くなることが多いですが、長く続く下痢の場合は薬や潰瘍性大腸炎などの特殊な腸の病気、大腸癌が原因となる場合もあるため、大腸カメラが必要になってきます。
下痢

考えられるよくある病気

感染性腸炎(細菌・ウイルス性腸炎)、虚血性大腸炎、過敏性腸症候群、薬剤性腸炎、食べ過ぎ

稀であるが重大な病気

大腸癌、潰瘍性大腸炎、クローン病、甲状腺機能亢進症

血便・下血

血便・下血は便に血が混じることで、多くは下痢(腸炎)に伴って起こります。少量であれば通常の外来受診で問題ありませんが、大量の出血がある場合(大腸憩室出血が多い)などは救急車での病院受診が必要です。血便が長く続く場合には、50代以上であれば大腸癌の可能性があり、20〜30代の若い方であれば潰瘍性大腸炎などの特殊な腸の病気の場合もあるため、大腸カメラが必要です。

考えられるよくある病気

細菌性腸炎(O-157など)、虚血性大腸炎、薬剤性腸炎、大腸憩室出血

稀であるが重大な病気

大腸癌、潰瘍性大腸炎、クローン病

便秘・お腹の張り(腹部膨満)

便秘やお腹の張りの多くは、便が出ていないいわゆる通常の便秘症が原因ですが、大腸癌などによって大腸が閉じてしまうことで便秘になる場合もありますので急に起こった便秘などは大腸カメラを行う必要があります。また、癌などが原因でお腹に水がたまること(腹水)で張りが出ることもあり、急にお腹が張ってくる場合は注意が必要です。お腹の大動脈に瘤ができる腹部大動脈瘤や大きな子宮筋腫が原因となる場合もあります。
便秘

考えられるよくある病気

便秘症、過敏性腸症候群、腸閉塞

稀であるが重大な病気

大腸癌、大腸閉塞、腹水、腹部大動脈瘤、子宮筋腫

逆流性食道炎、食道裂孔ヘルニア

逆流性食道炎とは、胃の中の胃酸が食道に逆流することによって起こる病気で胃食道逆流症(GERD)の一種です。食事の欧米化などにより日本でも近年増加しています。
逆流性食道炎

原因

食道と胃のつなぎ目が緩くなっている食道裂孔ヘルニアが主な原因となります。その他にも、肥満や加齢、薬などで食道と胃のつなぎ目の筋肉が緩くなることでも起こります。

症状

一般的な症状は胸焼けやゲップが多くなることですが、前述のとおり飲み込みにくさや喉のつかえ感・違和感が起こることもあり、みぞおちの痛みが生じることもあります。

検査

内視鏡検査で実際に食道に傷があるかどうか(炎症があるかどうか)を観察し、食道と胃のつなぎ目が緩くなっていないか(食道裂孔ヘルニアがないかどうか)を確認します。食道や喉の癌が症状の原因となっている場合がありますので、1年以上検査を受けていない方は内視鏡検査をお勧めします。

治療

まずは胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカーなど)で治療を行いますが、喫煙や飲酒、肥満、高脂肪食などは症状を悪化させますので、禁煙や節酒、食生活の改善なども大切です。また、食べ過ぎや食後にすぐ横になる習慣、就寝前2時間の食事なども症状悪化の原因となるため、生活習慣の改善も重要になります。

食道裂傷(マロリー・ワイス症候群)

食道裂傷(マロリー・ワイス症候群)とは、激しく吐くこと(嘔吐)を繰り返すことで食道と胃のつなぎ目付近の粘膜が破れて出血する病気です。

原因

激しい嘔吐が起こる原因としては飲酒が最も多いといわれています。また、飲酒後でなくても胃腸炎やつわりなどによって激しい嘔吐の繰り返す場合や咳やくしゃみなどによっても急激に食道と胃のつなぎ目付近の圧が高くなれば、粘膜が破れて出血することもあります。

症状

飲酒の後に何度も吐いて、そのうち血を吐く(吐血)といった症状が典型的です。血は真っ赤な新鮮血であることが多く、痛みは無い場合が多いです。大量の血を吐くこともあり、救急車で病院に運ばれる場合もあります。

検査

胃カメラで実際に食道と胃のつなぎ目付近に出血を生じるような大きな傷があるかどうかを観察します。観察時に実際に血が出ていれば診断が確定します。

治療

少量の吐血であれば、胃カメラで傷を確認して外来で様子をみることも可能です。大量の吐血の場合は入院が必要になりますが、胃カメラで実際に傷から出血をしていてもほとんどは自然に止まるため、そのまま絶食で様子をみていくことが多いです。血が大量に噴き出している場合には血管を焼いたり傷をクリップで留めたりする止血処置を行うこともあります。

急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)

急性胃炎・急性胃粘膜病変とは、さまざまな原因で胃の粘膜に炎症を起こす病気です。

原因

ストレスやアルコール、薬、寄生虫、ピロリ菌の感染などが原因となります。

症状

急激に起こるみぞおちの痛みや、吐き気、嘔吐、吐血、黒い便などの症状が生じます。

検査

胃カメラで胃の粘膜の状態を観察し、胃の粘膜にびらんと呼ばれる傷があったり、血がにじんでいたりするのを確認します。

治療

症状が軽ければ胃酸を抑える薬や胃粘膜を保護する薬で経過をみます。症状が強い場合は、入院の上で絶食と点滴を用いて治療を行います。多くの場合は数日で軽快します。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍とは、胃の中にある強い酸である胃液によって、胃・十二指腸の粘膜が傷つけられて、えぐられた様な状態になることをいいます。昔は治療法がなく手術となったり命を落としたりすることもある病気でしたが、今は薬によって治る病気です。

原因

ピロリ菌感染と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が主な原因となります。以前はピロリ菌による潰瘍が多かったですが、現在ではピロリ菌を持っている人が減っているため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの薬による潰瘍が増えてきています。

症状

症状としては、みぞおちの痛みが最も多く、背中の痛いが起こることもあります。十二指腸潰瘍では空腹時に痛みが出やすく、食事をすると症状が緩和することが多いです。潰瘍の部分から出血すると血を吐いたり(吐血)や黒い便が現れたりすることもあります。潰瘍によって胃や十二指腸が破れると、激痛になります。

検査

胃カメラで胃や十二指腸の粘膜の状態を観察し、粘膜がえぐれた潰瘍の状態になっているかどうかを確認します。

治療

潰瘍があるだけであれば外来での飲み薬による治療で治ります。潰瘍からの出血がある場合には、胃カメラで出血している部位を焼いて止血する必要がありますので入院が必要です。潰瘍によって胃や十二指腸が破れている場合には外科手術が必要となる場合もあります。また、ピロリ菌が原因である場合には、治った後に薬をやめると必ず再発をしますので、ピロリ菌の除菌治療が必要です。

慢性胃炎、ピロリ菌胃炎

慢性胃炎とは長い期間にわたって胃の粘膜が荒れた状態になっていることで、主にピロリ菌の感染が原因になります。
ピロリ菌

原因

慢性胃炎の多くはピロリ菌による胃炎(ピロリ菌胃炎)です。ピロリ菌は5歳頃までに親や井戸水などから感染するとされており、大人になってから感染することはほとんど無いといわれています。また、まれに自己免疫性胃炎という特殊な病気によって慢性胃炎が起こる場合もあります。

症状

無症状のことも多いですが、胃もたれやみぞおちの痛み、吐き気などが起こることもあります。

検査

胃カメラで慢性胃炎があった場合には、ピロリ菌がいるかどうかを検査します。以前は胃の細胞を採取して検査することもありましたが、採取によって胃からの出血が起こる危険性もあるため、現在では血液中のピロリ菌抗体を測定したり、息を吐く検査(尿素呼気試験)でピロリ菌がいるかどうかを確認したりする方法が多くなっています。

治療

ピロリ菌が原因である場合は抗生物質によるピロリ菌の除菌治療を行います。大人の場合には、ピロリ菌は一度消えれば再度感染する可能性はほとんど無いといわれています。薬による除菌の成功率は90%程度であるため、きちんと消えたかどうかの確認が必要になります。ピロリ菌が消えても慢性胃炎が完全に治る訳ではありませんが、症状が良くなったり胃潰瘍や胃癌になるのを予防したりする効果があります。

機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)とは、胃もたれやみぞおちの痛みなどの症状があるものの、胃カメラなどでは明らかな異常は認めない病気です。

原因

疲れやストレスなどによって胃の動きが落ちていたり、胃が知覚過敏になったりすることで症状が現れるといわれており、運動不足や不眠、食生活の乱れなどとの関連も指摘されています。また、ピロリ菌の感染によって同様の症状が出現することもあるといわれています。

症状

慢性的に続くみぞおちの痛みや胃もたれが代表的な症状であり、胃の重たい感じや食後すぐにお腹がふくれる、お腹が空きにくいなどの症状が生じることもあります。

検査

機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)をはっきり診断できる検査はありませんが、胃潰瘍や胃癌などの病気がないかどうかを確かめるために胃カメラが必要ですので、1年以上検査を受けていない方は内視鏡検査をお勧めします。また、ピロリ菌の感染によっても同様の症状が出ることがあるためピロリ菌の検査を行うことも重要です。

治療

主に胃酸を抑える薬や胃の動きを改善する薬、漢方薬などを用います。ストレスが原因のこともあるため、抗うつ剤などを使用することもあります。場合によっては心療内科での治療が必要となることもあります。

感染性腸炎

感染性腸炎とは、細菌やウイルス、寄生虫などの微生物が原因で起こる腸の病気の総称です。一般的に夏には細菌による腸炎が、冬から春にかけてはウイルスによる腸炎が多く発生します。

原因

多くは食品や汚染された水による感染であるが、ペットやヒトからの接触感染のこともあります。細菌では鶏肉などから感染するカンピロバクターが最も多く、ウイルスでは牡蠣などから感染するノロウイルスが最も多い。

症状

下痢、発熱、お腹の痛み、吐き気、嘔吐などの症状がみられることが多く、症状の強さや種類は細菌やウイルスの種類ごとに少し異なります。O-157(腸管出血性大腸菌腸炎)やカンピロバクターでは血便の頻度が高く、ノロウイルスは嘔吐と水下痢が強いが、発熱は無いことが多い。

検査

便検査で細菌やウイルスを特定できる場合もありますが、結果が出るまでに時間がかかるため治療法には関わらないことが多いです。血便がある場合やお腹の痛みが強い場合は血液検査やCT検査、大腸カメラなどで原因となる細菌などを特定していきます。

治療

一般的に感染性腸炎は自然に治ることが多いため、細菌が原因である場合でも抗生物質による治療は不要な場合が多くなっています。O-157やカンピロバクターなどの強い症状が生じる細菌では外来や入院の上で抗生物質による治療を行うことがあります。また、ウイルスによる腸炎などで水下痢がひどい場合には、脱水症になりやすいため点滴などによる水分補給を行います。

薬剤性腸炎

薬剤性腸炎とは、薬によってお腹の痛みや下痢、血便などの症状が生じる病気です。社会の高齢化に伴って多数の薬を飲んでいる方が増えており、薬による腸炎も増えています。

原因

薬によって直接腸の粘膜が傷ついたり、薬の作用によって腸の粘膜の防御機能が低下したりすることでお腹の痛みや下痢、血便などの腸炎の症状を起こします。解熱鎮痛薬である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やアスピリン、抗生物質などで起こることが多いですが、胃薬や抗がん剤、漢方薬などで腸炎が起こることもあります。

症状

薬の種類によってさまざまな症状が出現しますが、最も多く見られるのは下痢症状であり、時にお腹の痛みや血便もみられます。重症化すると腸が破れる事もあります(腸管穿孔)。

検査

まずは問診で薬が原因であるという可能性を疑うことが重要です。その上で大腸カメラを行って、その薬に特徴的な腸炎の傷や赤み(潰瘍や炎症)を見つけることで診断が可能となる場合があります。また、大腸カメラの写真だけでは分からない場合でも、大腸の粘膜から組織を採取する(生検する)ことで診断がつくこともあります。

治療

基本的には原因となっている薬を中止することで改善する場合がほとんどですが、特殊な抗生物質やステロイド剤で治療が必要な薬剤性腸炎もあり、腸が破れる(腸管穿孔)などの重度の合併症が生じた場合には手術となる場合もあります。

腸閉塞

腸閉塞とは、腸の変形やねじれによって腸が詰まったり、何らかの原因で腸の動きが落ちたりすることにより、食べ物や消化液などが流れなくなってしまう病気です。食べ物や消化液などの流れが止まってしまうため、腸が膨れ上がり、痛みやお腹の張り、吐き気などが起こります。

原因

お腹の手術を受けている方はその手術によって腸が変形している場合があり、腸閉塞の原因となります。他の原因としては、腸がねじれる腸捻転やがんなどの腫瘍によって腸が閉じてしまっている場合もあります。また、神経の病気や薬によって腸の動きが低下している場合(麻痺性イレウス)も腸閉塞になることがあります。

症状

食べ物や消化液などの流れが止まってしまうため腸がパンパンにふくれてしまい、お腹の痛みや張り、吐き気などの症状が起こります。重症化すると腸が腐ってしまったり(腸管壊死)、腸が破れてしまったり(腸管穿孔)することもあります。

検査

お腹のレントゲンで腸閉塞が疑われる腸のガスを認めた場合は、CT検査を行って実際に腸がどのような状態になっているかを調べます。CT検査では、実際に腸が膨らんでいる所や腸のねじれや変形、腫瘍が見つかる場合があり、診断の確定や原因の検索に有用です。

治療

CT検査などで腸が腐っていたり(腸管壊死)、破れていたり(腸管穿孔)していることが疑わしい場合は緊急で外科手術が必要となります。そのような緊急の状態でなければ、入院した上で絶食と点滴による治療を行います。場合によっては鼻から腸に管をいれて、たまっている食べ物や消化液を体の外に出す治療を行うこともあります。

過敏性腸症候群

過敏性腸症候群とは、お腹の痛みや下痢、便秘などの症状があるものの、大腸カメラなどでは明らかな異常は認めない病気です。

原因

疲れやストレスなどによって腸の動きが速くなったり遅くなったりすることで下痢や便秘になり、刺激に対しても過敏となることでお腹の痛みが生じるといわれています。

症状

慢性的に続くお腹の痛みや下痢、便秘が主な症状であり、軟便や水便が下痢型、硬い便が多い便秘型、どちらも同じように起こる混合型があります。

検査

過敏性腸症候群をはっきり診断できる検査はありませんが、大腸癌や潰瘍性大腸炎などの病気がないかどうかを確かめるために大腸カメラが必要ですので、数年以内に大腸カメラを受けていない方は検査をお勧めします。また、細菌感染などが原因でないことを確かめるために血液検査や便検査も有用です。

治療

食事指導や生活習慣の改善に加えて、腸の動きを調節する薬や整腸剤、漢方薬などを用いて治療します。下痢型の場合は下痢を抑える薬、便秘型に対しては過敏性腸症候群用の下剤を使用します。ストレスが原因のこともあるため、安定剤や抗うつ剤などを使用することもあります。場合によっては心療内科での治療が必要となることもあります。

大腸憩室炎

大腸の「憩室」とは、大腸の壁の弱い部分が、外側に向かって小さな袋状に突き出したところです。大腸憩室炎はその袋状の部分の中に炎症がおきて、お腹の痛みや発熱を起こす病気です。

原因

袋状にあった憩室の中に便などが入り込んだりすることがきっかけとなり、憩室の内部で細菌が繁殖して炎症を起こす病気です。肥満が発症の危険因子をいわれています。

症状

お腹の痛みや発熱が特徴で、下痢などを認める場合もあります。日本では、60歳未満では右側の大腸で生じることが多いため右脇腹の痛みが、より高齢者では左側の大腸で生じることが多いため左下腹部の痛みが起こることが多くなっています。また、左側で起こる憩室炎の方が、大腸が破れる(大腸穿孔)などの合併症を伴いやすく重症化しやすいといわれています。

検査

血液検査で体の中の炎症反応が上昇していることを確認します。症状と血液検査からだけでも診断は可能ですが、基本的には腹部エコー検査やCT検査で実際に大腸の憩室の周囲が腫れていることを確認します。特に右側の憩室炎の場合は、いわゆる「盲腸」(急性虫垂炎)との区別が難しいため、画像検査での確認が必要です。

治療

軽症の場合は飲み薬の抗生物質による外来加療も可能です。お腹の痛みなどが強い場合には入院の上で絶食と抗生物質の点滴での治療を行います。抗生物質による治療でほとんどの場合が改善しますが、重症化して腸に穴が開いている(大腸穿孔)場合などは外科手術が必要となります。

大腸憩室出血

大腸の「憩室」とは、大腸の壁の弱い部分が、外側に向かって小さな袋状に突き出したところです。大腸憩室出血はその袋状の部分の中の血管が裂けて大量の下血を生じるもので、大腸からの出血では最も頻度が高い病気です。

原因

憩室の部分は比較的太い血管が通っていることが多く、袋状になっているため血管に傷が付きやすいため出血を生じるといわれています。

症状

前触れもなく突然大量の下血が生じることが多く、お腹の痛みなどもありません。大量の出血のため意識を失って救急車で運ばれることもあります。大量の出血が起こりますが、ほとんどの場合は自然に止まるため、命に関わることはほとんどありません。

検査

血液検査で貧血になっているかどうかを確認し、造影CT検査や大腸カメラなどを行って実際に出血している部位を特定します。カメラで出血している部位が確認できた場合は、そのままクリップなどで出血している部位を挟んで止血することも可能です。

治療

ほとんどの場合、出血は自然に止まるため絶食と点滴だけで治ることが多い病気です。大腸カメラで出血している憩室を発見できた場合には、前述のクリップでの止血も有効です。一方、大量出血によりショック状態にあるような場合には、血管内治療で出血を止めたり、緊急手術によって出血している大腸を切除したりすることによって止血します。

急性虫垂炎

急性虫垂炎とはいわゆる「盲腸」のことで、盲腸の先に付いている虫垂という小さな管が、異物や石などで閉塞して内部で炎症を起こす病気です。

原因

はっきりとした原因は分かっていませんが、虫垂に便が固まった石(糞石)や種などの異物が詰まることで、虫垂内部が炎症を起こし化膿することで起こると考えられています。また、食べ過ぎや飲み過ぎ、不規則な生活、便秘、過労によっても症状が誘発されるといわれています。

症状

右下腹の痛みでよく知られていますが、初期にはみぞおちの痛みであることも多く吐き気や嘔吐、下痢などを伴うこともあります。典型的には痛いが徐々に移動して最終的には右下腹部の痛みとなります。また、発熱を認めることも多く、悪化するとお腹全体の痛みが生じるようになり、歩くだけで痛みが響くようになります。

検査

まずは血液検査で体の中の炎症反応が上昇していることを確認します。昔は痛みと触診だけで手術が行われることもあったようですが、現在では腹部エコー検査やCT検査で実際に虫垂が腫れていることを確認するのが原則です。

治療

以前は軽症のものは抗生物質による治療を行い、それ以外は緊急手術などが行われることが多かったですがが、現在ではまずは抗生物質で炎症を抑えた後に数ヶ月してから手術を行うことも多くなっています。いずれにしても基本的には入院での治療が原則になります。

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎とは、大腸の血管の一部で血液の流れが悪くなることでその部分の大腸が腫れて粘膜がただれることによりお腹の痛みや血便が起こる病気です。

原因

便秘や脱水、血管の動脈硬化により大腸での血液の流れが悪くなることで起こります。動脈硬化を起こす高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病によって発症の危険性が増すため、一般的には高齢者に多いといわれますが、若い方でもなることがあります。

症状

突然起こる下腹部の痛みが特徴で、その後、下痢や血便が出現してきます。ほとんどの場合は左側の大腸で起こるため、特に左の下腹部の痛みが生じる場合が多いです。血便は真っ赤な血が出ることが多く、吐き気を伴うこともあります。

検査

血液検査で体の中の炎症反応が上昇していることを確認します。大量出血が起こることは少ないため、貧血になることは稀です。大腸カメラで大腸の腫れを確認することで診断が確定しますが、大腸の腫れが強いときの大腸検査は痛みが強く、症状が悪化する場合もあるためお勧めしません。症状が改善した後に、大腸癌などがないかどうかを確認する目的で大腸カメラを行います。

治療

虚血性大腸炎は基本的には自然に治っていくため、特別な治療は必要ありません。症状が軽い場合には外来通院での治療も可能であり、消化に良い食事と整腸剤などで症状を緩和しながら経過をみていきます。症状が強い場合には、入院の上で絶食をして点滴などでの治療を行います。ほとんどの場合は後遺症などが残ることはありませんが、まれに治った後に大腸が狭くなることもあります。

便秘症

便秘とは、医学的には「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出出来ない状態」と定義されていて、便の回数や量が少なくて、大腸の中に便が滞っている状態や便は直腸まで来ているが、そこから体外になかなか排出出来ない状態をさします。便の回数や量には個人差があるので、同じ状態でも便秘かどうかは1人1人で違います。

原因

便秘には、
  1. 神経の病気や薬、加齢などによって腸の動きが低下することで起こる排便回数減少型便秘
  2. 肛門部分の筋肉が衰えるたり便が硬かったりすることよる排便困難型便秘
  3. 大腸癌やポリープなどで大腸が閉塞することによる器質性便秘
などの種類があり原因もさまざまですが、大腸癌でも便秘になることがあり注意が必要です。

症状

便秘として自覚できる症状としては排便の回数の減少や、便をしっかりと出しきったという感覚がない残便感などがあり、お腹の痛みやお腹の張り(腹部膨満感)が出現することもあります。

検査

バリウムを用いて排便の機能を調べたり、レントゲンに写るマーカーで大腸通過時間を測定したりするような専門的な検査もありますが、このような検査は大学病院などでしか行えないため、便秘の診断は検査というよりも病歴や問診から行っていきます。しかし、大腸ポリープや大腸癌による閉塞から起こる便秘症もありますので一度は大腸内視鏡検査をお勧めします。

治療

便秘の改善にはまずは生活習慣の改善が必要です。食生活では、食物繊維や水分の摂取、乳酸菌食品の摂取が有効です。また、十分な睡眠をとり生活リズムを整えて、適度な運動をすることも重要となってきます。生活習慣の改善のみで良くならない場合は、薬による治療が有効です。昔はくせになりやすいセンナなどの刺激性下剤が良く使用されていましたが、最近では癖になりにくい薬も多く開発されています。また、便秘症の治療には漢方薬も有効です。

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜、特に直腸の粘膜がただれることによって、血便や腹痛などが起こる原因不明の病気です。現在全国に22万人ほど(約500人に1人)の患者さんがいるとされており、10代から30代の若い世代に発症することの多いといわれています。

原因

潰瘍性大腸炎の原因は不明ですが、遺伝的な要素と環境的な要素が合わさって発症すると考えられています。近年、日本では発症する方の数は増加傾向にあり、環境的な要素である食生活の変化が原因ではないかといわれています。

症状

繰り返し続く血便や下痢が特徴的であり、腹痛も起こります。頻繁に便意があるのに便が出ない「しぶり腹」や便が残ったような感じがする「残便感」などの症状が生じることもあります。大腸以外では皮膚のただれや関節の痛み、目の症状が起こることもあります。

検査

血液検査で体の中の炎症反応が上昇していることを確認します。出血のため、貧血となっていることもあります。潰瘍性大腸炎の粘膜のただれは比較的特徴的ですので、大腸カメラで診断が付くことが多いです。同じような腸の原因不明の病気であるクローン病と区別が付けづらい場合もあります。

治療

8~9割の方は症状の比較的軽い軽症や中等症であり、飲み薬(5-アミノサリチル酸製剤)による治療で症状が落ち着く場合が多いです。症状が強い場合にはステロイド剤や免疫抑制剤を使用することもあります。軽症や中等症の場合には外来通院での治療も可能ですが、重症になった場合は入院での治療が必要となり、点滴での治療薬(抗TNF-α抗体製剤など)が必要となることもあります。以前は薬が効かなかったり、大腸に癌ができたりして手術になることも多い病気でしたが、現在は治療効果の高い薬が多く使えるようになり、手術になるようなことは減ってきています。実際に、一生のうちに大腸癌を合併する患者さんはごく一部であり、重症の一部の患者さんを除けば、ほとんどの患者さんの生命予後は通常の方と同等です。

クローン病

クローン病とは、潰瘍性大腸炎と同じように腸の粘膜がただれることによって起こる原因不明の病気です。潰瘍性大腸炎とは違い、大腸だけではなく他の消化管(胃や小腸など)にも病気ができます。現在全国に7万人ほど(約1500人に1人)の患者さんがいるとされており、10代から20代の若い世代に発症することの多い病気といわれています。

原因

クローン病の原因は不明ですが、遺伝的な要素と環境的な要素が合わさって発症すると考えられています。潰瘍性大腸炎と同様に、近年の日本では発症する方の数は増加傾向にあり、環境的な要素である食生活の変化が原因ではないかといわれています。

症状

繰り返し続く下痢や腹痛が特徴的であり、血便や発熱が起こることもあります。また、肛門部分に病気ができやすく、痔や肛門の周囲に膿がたまる肛門周囲膿瘍、痔瘻などが特徴的です。腸が狭くなることによって腸閉塞を起こすこともあります。また、潰瘍性大腸炎と同じように皮膚のただれや関節の痛み、目の症状が起こることもあります。

検査

血液検査で体の中の炎症反応が上昇していることを確認します。クローン病で腸にできる粘膜のただれや潰瘍は比較的特徴的ですので、大腸カメラや腸の造影検査で診断が付くことが多いです。また、「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」というクローン病に特徴的な細胞が腸の粘膜から検出されることも診断の助けになります。

治療

以前は食事制限や飲み薬(5-アミノサリチル酸製剤やステロイド剤)による治療が中心でありましたが、病気を完全にコントロールすることは難しく、ほとんどの患者さんが一生のうちに一度は手術が必要になると言われてきました。近年では効果の強い点滴での治療薬(抗TNF-α抗体製剤など)が登場したため、以前のように手術になることは減ってきています。

胆石症・胆嚢炎・胆管炎

胆石症とは胆嚢や胆管に石ができる病気で、石がつまることで痛みが生じたり(胆石発作)、石で胆汁の流れが悪くなることで細菌感染による炎症(胆嚢炎・胆管炎)を起こしたりします。

原因

胆石にはコレステロール石と色素石があり、コレステロール石は胆汁のコレステロールが高いときに石ができるとされますが、色素石の原因はよくわかっていません。食生活の欧米化に伴って胆石保有率は増加しています。胆石があると、胆汁の流れが悪くなり感染症を起こしやすくなるため胆嚢炎や胆管炎が生じる事があります。

症状

胆石があるだけでは無症状であることがほとんどですが、石が詰まることで右の脇腹に痛みが生じたり(胆石発作)、炎症を起こすことで熱や黄疸が出現したりします(胆嚢炎、胆管炎)。

検査

胆石は腹部超音波検査やCT検査で胆嚢や胆管の中に石があるかを確認することで診断がつきます。胆嚢炎や胆管炎になると、血液検査で炎症の値が上がり、特に胆管炎では肝臓や胆嚢の酵素の値が上昇することがあります。また、MRIを使って胆嚢や胆管を詳しくみる検査(MRCP)を行うこともあります。

治療

胆石があっても症状や炎症がなければ特に治療は必要ありません。胆石が原因の痛みや熱が出現するようになる際には、手術による胆嚢摘出術の適応になります。また、炎症を起こすと、菌が血液中に入り込んでしまう重篤な自体(敗血症)になることもあるので入院での抗生物質による治療も必要です。

膵炎

膵炎とは膵臓に何らの原因で炎症が起こる病気で、急激に炎症が起こることにより激しいお腹の痛みが生じる急性膵炎と、比較的長期の炎症によって徐々に膵臓の細胞が壊されることにより膵臓の機能が低下していく慢性膵炎があります。

原因

急性膵炎の主な原因はアルコールと胆石で、男性ではアルコールが40%程度と最も多く、逆に女性では胆石が40%と最も多くなっています。慢性膵炎の主な原因はアルコールです。

症状

急性膵炎の場合は、急激に起こる強いみぞおち・背中の痛みや嘔気・嘔吐、発熱などが特徴であり、体が黄色になる黄疸が出現することもあります。慢性膵炎ではみぞおちや背中の痛みが慢性的に続き、時に発作的に強い痛みとなります。食欲不振や嘔気、下痢なども出現します。

検査

急性膵炎では血液検査で膵臓の酵素が上昇していることを確認し、超音波検査やCT検査で膵臓が腫れていれば診断となります。慢性膵炎では血液検査に加え、超音波検査やCT検査で膵臓の大きさや形などをみて診断します。

治療

急性膵炎では、絶飲食による膵臓の安静と体の中に漏れた膵臓の酵素を洗い流すため十分な量の点滴が必要になるため基本的には入院での治療を行います。慢性膵炎の治療は、痛みを取る薬や膵臓の機能を補充する薬などを使っての治療となり、主に外来で行っていきます。